ビビりながら美大の卒展に行ってみた話

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 美術展に行くのって、なんだか緊張しませんか?
 
 慣れてる人ならまだしも、僕のように全く芸術作品に触れてこなかった小心者からすると、結構ハードルが高い。なんとなく、格付けチェックのように見る側の「格」を問われているような気がして、純粋に楽しめないのだ。
 
 興味がない訳ではない。興味はあるけど、何も知らない自分が行って大丈夫だろうか、という不安が先行してしまう。僕の知らない観賞のルールがたくさんあって、うっかり破ってしまってそこらじゅうに潜んでいる私服警備マダム達につまみ出されたらどうしよう…
と思ってしまうのだ。
 
 とはいえ 結論から言うと、
 そんな僕でも、ビビりながら美大の卒業制作展に行ったところ、めちゃくちゃ楽しかったのだ。
 
 美術展はちょっと...という人にこそ、是非行ってみて欲しい。
 
 
 

 気になるけどビビる

 
 美大の卒展の存在を知ったのはTwitter前日にバズっていた展示に、すごく惹かれたのだ。(冒頭の写真である)
 あぁいう、市役所の玄関脇とかに展示してある建築模型とかって、見てるだけでわくわくする。数寄屋橋の交番の模型とか家に欲しいくらい。
 
 調べたところ、武蔵野美術大学の卒業制作展で展示されているものだった。しかも期間中は一般公開しているとのこと。これは行ってみたい。
 でも美術大学美大だ。そっかぁー美大っかぁー。
 美大とか芸大って、何だかばく然と崇敬や憧れみたいなものがある。変わった人が多いけど、とにかくもうその分野で凄い、みたいなイメージ。
 例えば、大手企業に勤めてます、って友人より、知り合いに美大に通ってる奴がいるよ、って言われる方が興奮する。いや興奮って。でもそれくらい、「すげぇ」って気がするし、「住んでる世界が全く違う」とすら思ってしまうのだ。
 
 ちょっと高いイチゴは滅多に食べないけれど、何となく親近感はある。でもドリアンはそうはいかない。名前は知ってるけど未知。癖があって果物の王様と呼ばれていることしか知らない。なんなんだドリアンって。日常でドリアンなんて食べる機会滅多にないだろう。めちゃくちゃ興味はあるけど、いざ目の前に出されたらビビって手を出せない気もする。
 つまり、僕の中で美大はドリアンなのだ。興奮しすぎて例えを例え直してしまった。うっかり。
 要は、行ってみたいけど美大ってそんなふらっと行けるもんなのか、ましてや展覧会すら尻込みして行けないのに」ということである。
 
 
 

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これをまるまる1個って考えると尻込みする。調べたら冷凍ドリアンって手段もあるらしい。
 翌日は予定が空いていたし、休日に遊びに出かけるのにはちょうど良い天気。絶好の機会だ。
 でもなぁ、美大こわいなぁ、大丈夫かなぁ、どうしようかなぁ。ビビりまくり。
 そんなこんなでどうしようか悩みながら眠りについた。寝付きが悪く、3回くらい夢を見た。全部ウォシュレットの水流が強すぎてどうにかなる夢だった。なんだそれ。僕の中の芸術欲が爆発してしまったのだろうか。こんな夢を毎晩見るのはさすがにつらいし嫌だ。こうしてもやもやして過ごすくらいなら行ったほうが良い!
そう決心して家を出た。
 
 
 武蔵野美大立川駅からバスで30分弱。
 別の最寄駅から歩くルートもあったけれど、大学前まで直行してくれるバスを選んだ。道に迷って展示時間が終わってしまったらもったいない。僕はしばしばそういうミスを犯しがちだ。
 車内はおそらく美大に向かうであろう人たちで満員だった。なんとなくの緊張感。自分は美大に入ってよい人間なのか、吟味されてるようでドキドキする。下車時にタッチしたSuicaが自分だけ反応しなかったら諦めて帰ろうか、とか本気で悩んだが、Suicaはしっかり反応してくれた。ありがとうSuica
 

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学舎の写真を全然撮っていなかった。
 
 停留所を降りていざ武蔵野美大へ。
 なんてことはない、一見よくある大学だった。訪れる人もカップルや親子連れも多く、いわゆる変わった見てくれの人はいない。あちこちに作品のようなものがあるけれど、それくらい。
 雰囲気も展覧会!というよりは落ち着いた学園祭のようで、さっきまでの緊張感も和らぐ。
 
 正直もっと楳図かずお邸みたいなファンキーな世界を想像していたので(すごい偏見だ)、ほっとした。あれ?意外と普通じゃん。良かった。入口でパンフレットを貰う。より学園祭っぽくなってきたぞ。
 
 とりあえず、冒頭の作品が展示されているところを目指しつつ、道中の展示を観てまわる。
 
 作品は主に、①広場や通路といった屋外②体育館やホールのような大きい会場③学舎内の教室 に展示されているようだった。
 屋外の展示やホールの展示は僕が想像していた仰々しい感じ、学舎内の展示は高校の学園祭に近い、割とフランクな感じの雰囲気。
 この2つの雰囲気が混じり合う奇妙な感覚に戸惑う。

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安心したのも束の間、突然家具一式が置かれてたりする
 
 作品は学内の至る所に展示されていて、統一感があるようでない。ある程度学科ごとに展示がまとまっているようだけど、建築模型の隣に油絵が展示されてたり、立体作品が置いてある横にアニメやゲームが展示されていたり…
 いろんなものが入り乱れていて、結構混沌している。
 

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まさに美術館、といったスペースも沢山ある。
 
 中でも各教室内の展示がすごく面白かった。
 学舎の中は、普通の大学というよりは高校の教室とか、アパートに近い感じ。各部屋を訪れるたびに、全く違う世界観が僕を襲う。
 教室そのものが異世界の洞窟や、ひとり暮らしの部屋をモチーフにした空間作品になってたり、ストップモーションや映像作品の小劇場になってたり。
 いかにも芸術だ!という作品だけでなく、エアマックスを人体構造見立てて分解展示してあったり、薬の名前と用途を組み合わせて神経衰弱にしたゲームが展示されてたり。
 挙げ出したらキリがないくらいの圧倒的な情報量。なんか初めて築地に行ったときの興奮を思い出した。整然としてるようでごちゃごちゃしていて、圧倒される。
(圧倒されすぎて、ここらへんの写真を全然撮っていなかった。)
 
 初めて見る世界だらけだけど、どことなく親近感が湧く作品も多い。すごい。美術とか芸術って、意外と身近な世界だったんだ。正直、卒業制作と聞いてもっとお堅いものを想像していたのでびっくりだ
 

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街中で見かける塗装の剥がれをキャラクターに見立てた作品。かわいい!
 

 美大に飲まれていく

 
 フェスと学園祭が同時に行われているような、この奇妙な感覚に徐々に興奮しっぱなしだ。なんだこれ!もう理解なんて追いついていない。
 でもそれが楽しい。ハンズに行って全然興味ない、一生使わなさそうな工具に惹かれちゃうみたいな。いや、ちょっと違う、なんだろう、この感じ。そう、コミケだ!
 各々が好きなこと、やりたいことを自由に表現し、情熱で溢れている。すごい空間だ。美術展ではこうはいかないんじゃないか。ある種のテーマが設定されているけど、この空間ではその際限がない。あるのはあらゆる方面への情熱と、処理しきれないほどの情報量。
 
 
 そして徐々に、作品だけでなく美大そのものが楽しくなってくる。
 「アトリエとか工房って書いてある部屋がたくさんある!すごい、工房って実在したんだ!画材屋?!学内に画材屋が!!あぁ食堂もあるじゃん!!美大生も僕と同じように飯食うんだ!!(当然だ)」
 

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廃液の分別タンクが3種類もあって興奮する
 
 目に映るものすべてに興奮しすぎて、感覚が麻痺してくる。素人が美大に1時間もいるとどうなるか。
 そう、目に入るもの何もかもが芸術作品に見えてくるのだ。言うなれば美大ハイだ。大学前通りの安い居酒屋の看板メニューではない。
 

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掲示板に何故か垂れ下げてある筆。

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意味深に放置されている台車。垂れてる養生テープが良い雰囲気だ。
 

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どこにでもある消火器ですら、もうそういう作品に見えてくる

 

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半地下にあるトイレ。端に置いてあるスコップに作者の底知れぬ意図を感じてしまう。
 
 
 そんなこんなでふらふらと日常的なアートに一喜一憂していると、不意に目を奪われるようなでっかい絵画や立体物に遭遇したり。もうぼくの情緒はキャパオーバーだ。
 

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日常と非日常を行ったり来たり。完全に飲まれている。
 
 そんなこんなでホールで作品を眺めていると、どでかいカンバスの前で製作者らしき女の子と、いかにもクリエイターみたいな人が作品について語らっていた。
「どや、うちの工房で描いてみいひんか、ほれ(差し出す札束)」「そんな、先生のアトリエを離れる訳には…!」ヘッドハンティングだ。すごい。こんなのって現実で見かけるとは思ってなかった。(会話以降は全て僕の妄想である)何が現実かもうよくわかっていない。
 

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格好良いビルは浪漫だ。
 結局全然時間が足りなくて、なんとも言えない高揚感に包まれたまま大学をあとにした。ふらふらだ。触りだけで完全に飲まれてしまった。全体の5分の1も見れていなかったと思う。帰り際、えらく格好良い赤ジャケットを羽織った警備員さん達が忙しそうに働いていた。「はい、守衛室です」そう言って電話を取るおじさん。しまった、警備員じゃなくて守衛さんだったのか。もはや何がなんだかである。
 
 ともかく、ビビりつつも行ってみた美大は楽しかった。そこは日常と非日常が入り交じる混沌とした世界だった。今年の展示は終わってしまったようだけど、少しでも興味を持った人は来年、是非行ってみて欲しい。初めて訪れるのなら間違いなく新たな発見があると思う。
 来年はもっと時間にゆとりを持っていきたいところだ。ドリアンはお盆にでも食べようと思う。
 
 
 
余談。 
帰り際、
ウォシュレット 夢
で検索をかけたら何件かヒットしてしまった。浄化を表す吉夢らしい。てか僕以外にもウォシュレットの夢をみる人いるんだ。美大しかり、まだまだ知らない世界があるんだなぁと実感したのであった
 

ディストピア遊園地、手柄山遊園の思い出

 

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社会人になるとびっくりするくらい一日が過ぎるのが早い。酷く暑い毎日が終わったと思ったら、いつの間にか大晦日だ。去年まで学生だったと思うと感慨深い。

去年の今ごろは何してたのかな...、そうだ、あのよくわからない異空間、手柄山遊園にいたんだ。

 

 

きっかけはヒッチハイクと回転展望台

 

去年の年明け(正確には今年の1月ではあるけれど)、埼玉に住む友人がうっかりヒッチハイクで僕が住む神戸まで遊びに来た。せっかくなのでおもてなしタイムである。神戸の街を一通り案内した後、行ってみたいところがあるか尋ねると、「姫路に今年で閉鎖されてしまう面白い回転展望台があるから行きたい」と言う。

回転展望台!なんて素敵な響きだろうか!回転寿司に回転ベッドも然り、日本人は回るものに弱い。お代官様だって隙あらば帯を引いておねーさんを回したがるものだ。

ちょっと面白そうだったのもあって、すぐさま車を出せる友人を捕まえて、姫路へと向かう。良い女性を捕まえるのも大事だが、やはり持つべきものは車を出せる友人である。...自分の場合は女性に縁がないだけなんだけど。

 

 

空から見下ろす異空間

 

www.google.co.jp

 

いざ現地に着くと、なんともまぁ立派な展望台を前にテンションが上がる一同。詳細は省くが、とにかくもう好きな人にはたまらない場所だった。とくに年季の入りまくったエレベーターなんて照明がスイッチ式で、誤って電気を消してしまった僕らは興奮ポイントの渋滞で軽くパニックに襲われたくらいだ(というか今にも壊れそうなエレベーターに閉じ込められて電気が消えたらそりゃパニックにもなる)。凄まじかった。

 

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 当日の手柄ポートの様子。まるでLAの空港にある管制塔みたいだ。

 

さて、この展望台の上部は客席がドーナツ状の回転式喫茶店になっていて(神戸のポートタワーをイメージしていただくと分かりやすいと思う)、座りながらにして姫路市内をぐるりと一望できる。

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店内の様子。ミックスジュースにミートソーススパゲティを食べた。この手の店に来たら王道である。

 

僕らはこのノスタルジーな雰囲気と、昔ながらの喫茶メニューに舌鼓を打ち、姫路の街を見下ろす。3周目に入った時だった。友人が呟いた。

「あれ...?下の遊園地、年始でやってないだけかと思ってたけど、人...いるよな?もしかして稼働してる...?」

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一通り展望台を満喫して下に降りる一同。手柄ポートでの興奮と、真下に広がる謎空間への好奇心でワクワクが止まらない。歩いてすぐ行けるところに遊園地の門があることは上から確認済みだったので、嬉々としてそこへ向かうぼくら。気分はドラクエⅤ序盤の主人公だ。

 

やけにファンシーな昭和感のある門構えと、それとは対照的に不気味な周囲の様子。僕ら以外には人っ子ひとりいやしない。まるで廃墟だ。

 

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よく見るとどうやら正門ではないようで、表に回って入場して欲しい旨が書いてある...が、僕らの目に飛び込んできたのはそれよりもこのお知らせである。

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ひめじ手柄山遊園、一体何だったら遊べるんだ...

 

なんてことだ!遊園地王道遊具が全滅である!すべり台がなくなったら一体何で遊べば良いんだ!

児童公園から遊具が減っている、ということは知っていたけれど、その手が遊園地まで伸びていたなんて!世知辛い!

 

しかし、ここまで廃止されてなお開園しているのか...?

ますます興味が湧いてくる我々一同。

いよいよ好奇心が全て手柄山遊園に全振りされてしまっている僕らは一刻も早く、と焦る気持ちを前面に出して正面玄関へと急ぐ!

 

そして衝撃の光景が!

 

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入場料

4歳以上

100円!?!?

 

びっくりだ。正直入場料2000円とかだったらどうする?流石にここ入るのにそれはちょっと高いよねぇ、とか相談しあってたのが恥ずかしい。手柄山遊園は誰しもを受け入れる菩薩のような施設だったのだ。入り口で流れ続けるよくわからないアニソンのような曲が僕たちを包み込む。

さて、まずは入場券である。100円となればもう全員笑顔でゴーサインだ。受付にいるお姉さんに大人4人で、と声をかけると、彼女は驚いた顔で答える。

「え?えーっと、大人4人、ですよね?お子様は...?はぁ、いない。ちょっと待ってくださいね?あぁー、遊べるアトラクション4つくらいしかないですけど大丈夫...ですか?あ、でもお兄さんたち140cm以上あるんで3つですね。行きます?」

狼狽えるスタッフさんに、僕らは笑顔で100円ずつ取り出し、400円を支払い人数分のチケットを受け取る。

そして誰もいない入場ゲートを抜けた先には、

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もう大興奮だ!広い敷地とは裏腹に、屋上遊園地のようなノスタルジーな空間が眼前に広がっているではないか!

完全に止まった観覧車!何も走らないレール! そして水の抜かれた水上アトラクション!閑散とした空気!まるでディストピアのような世界が広がっていたのである!気持ち良い!

当時流行っていたけものフレンズという作品を彷彿とさせる雰囲気にやられる一同。僕ら以外には2、3組しかお客さんもいない。

(正確には手入れもされているようで、稼働しているアトラクションにはスタッフもしっかりと存在しているのだけれど。)

 

よくよく聞いてみると、夏場は市民プールとして稼働しているようで、真冬の閑散期、ましてやこんな年始早々に来る客はほぼいないため、このような風景が広がっているんだという。なるほど、それは納得。ならいっそ冬季は休園すればよいのでは、とも思ってしまうが。

 

では早速、僕たちが唯一遊んだアトラクションを紹介しよう。

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スリラー館である。

他のアトラクション(といっても水上カヌーとかそんなんしかない)はまだスタッフが暇そうに、切なそうに突っ立っているのだけど、ここだけは園内の端にあり、スタッフすらいない。明らかに空気感が違う。なんなら入場チケットもこのボックスに入れてネ!とかいう賽銭箱方式である。そしてなにより、

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もういろんな意味でギリギリだ。崖っぷちテーマパークだ。

館内は撮影禁止だっため(確か)、写真は残っていないのだが、男4人で入って普通に叫ぶくらいには怖かった。いや、正確には作り自体はチープなのだけど、この遊園地の廃墟感とスリラー館の不気味加減が良い塩梅に僕らの恐怖心を煽っていたのかもしれない。少なくともぼくは純粋に怖かった。

 

さて、スリラー館を無事脱出した我々一同。ここで問題が。

早くも遊ぶアトラクションがないのだ。水上アトラクションはいくつかあるが、この寒い中濡れるのはちょっと...、となるともう選択肢がない。もしこれがデートだとしたら即詰みである。というかこんな場所に付き合ってくれる彼女は絶対大事にしたほうが良い。

とはいえ、せっかくなので思う存分エンジョイしたい。パンダの背中に乗る我々。

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 時速2kmくらいの速度でのっそり動くアニマルたち。前進するときはやたらファンシーな音楽が鳴り響くのに、後退するときだけ軽トラのバック音(ぴー、ぴー、みたいな音)が流れてきて爆笑する我々。

 

さて、やることがなくなってしまった。あっという間だったけれど、なにか暖かい大事なものを得た気もする。少なくとも100円以上の興奮とスリルはあったはずだ。そろそろ僕らも現実に戻る時間。なんか年始早々すごいとこに来ちゃったね、と話しながら僕らは帰路に着いたのだった。

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今回のきっかけになった友人。スリラー館とパンダだけでこの表情である。

 

この記事を運良く見つけたあなた、年始は手柄山遊園まで足を伸ばしてみませんか。というか行ってください。なんか年始も入場料安くなるみたいですよ!

 

 

初ソープでイメージプレイ専門店に行った時の話。後編

 

 

ノヴ「お部屋は3階になります。」
そう言って階段を登るノヴに続く。
そうか、ここはノヴの城だ。いわばリアル4次元マンションだ。
3階に上がると、奥の方の部屋まで案内される。館内は古めのカラオケ施設といった具合で、狭い廊下の左右に扉が並び、それぞれ「自宅」であったり「教室」などと書かれた札が貼られている。

左奥の部屋のドアに手をかけ、扉を開けるノヴ。「ではここがお部屋になります。診察台に腰掛けてお待ちください。」そう言われて部屋に入る。
中は薄暗い。診察室とは言っても小綺麗な病院のイメージではなく、地方にある小さな内科のような感じ。よくAVとかで見るやつだ。籠に荷物を入れ、言われた通り診察台に座って待つ。

しばらくすると、コンコンという小さなノックと共に、ピンクのナース服を着た姉ちゃんが入ってくる。
ナース
「こんにちはー。担当の〇〇です。先生が他をまわってるので今回は私が担当しますね。よろしくお願いします♡今日はどうしましたー?」

早速である。扉に入った瞬間からこの空間は診察室で、ぼくは患者、彼女はナースなのだ。これからえっちな診察をされちゃうんだ。語尾のハートマークだって実際見えてるような気がした。その割には落ち着いている自分に気付く。そうか、ノヴのおかげで現実感が麻痺してるのかもしれない。ありがとうノヴ。

ぼく
「なんか最近身体がだるくて...ちょっと熱っぽいんですよね」
ここは非日常。だが何を言ってもそれが日常になる空間だ。それにしてはかなり平凡なセリフを選んでしまった。「おちんちんが破裂しそうなんです!(ボロン」とか気が利く台詞が咄嗟に出てこない。さっき中途半端な台本を読んだせいだろうか。

ナース
「あらあら。じゃあちょっと鼓動を見てみよっか。服を脱いでそこに寝転んで?」
ぼく
「分かりました。うつ伏せですか?」
ナース
「もう!背中が上じゃ鼓動が聞けないじゃない!仰向けになって♡」

しょうもないボケにもちゃんと突っ込んでくれる。なんて良い世界なんだ。羽織っていたシャツを脱ぎ、診察台に横になる。
ナースさんは じゃあみていくねー、と言って首にかけた聴診器を使って診察を始める。
ナース
「うわぁ、すごく鼓動が早い...。大丈夫?」
ぼく
「いや、ちょっとだめかも...うっ」

ナースの聴診器がぼくの乳首に触れる。同時に左の手でぼくのお腹を撫でる。あ、聴診器で乳首をツンツンされるの弱かったんだと気付く。

ナース
「身体、すごくあついよ?ちょっと熱っぽいかも。どこか痛いところはある?」
ナイスだ。さすが慣れているだけある。ぼくの下手なパスを上手く捌きアシストしてくれている。ここは勢いでいくしかない。

ぼく
「痛いところ...そうですね、下半身が痛いというか、熱っぽいというか」
エロマンガの読みすぎである。だがここではこれが日常なのだ。なんの問題もない。

ナース
「そっか。じゃあちょっと触診するね?」
彼女は優しくぼくの下腹部をさすっていく。あ、これはやばい。えっちな触診ってこんな興奮すんのかよ。まだ服の上からだというのにおちんちんはビンビンだ。数十分前に「ちゃんと勃つかな」なんて言ってた自分を投げ飛ばしたい。息子は試合前に備えて充分な睡眠を取っていただけだったのだ。修学旅行の前日に興奮して眠れなくなって当日寝不足ではしゃげない自分みたいな人間より、こいつの方がよっぽどスマートだ。まさか自分のチンコに体調管理を学ばされる日が来るとは思ってなかった。

ナース
「あれ?ココ、ちょっと腫れてる?痛くない?」
ちんこを撫でるナース。
ぼく
「うっ、はい、かなり熱っぽくて、は、腫れてる感じがします」
自分のことだろう。そこは断言してほしい。

ナース
「そか。でもこのままじゃつらいよね?服、脱ぐ?」
ぼく
「その方が良いかもしれません」
言われるがままだ。

ナース
「じゃあ脱がせるね?」
そう言ってナースはぼくのベルトを外し、チャックを開けズボンをおろし始める。
その瞬間、あぁ今ぼくは他人に、ましてやナースさんに勃起ちんこを見られようとしているんだなと自覚し震えてしまう。もう泌尿器科には通えない事だろう。

ナース
「あれ?さっきより腫れてる!大丈夫?痛くない?」
ぼく
「痛くはないですけど...でも熱くてつらいです。これってどうすれば」
それにしても献身的なナースである。本当に心配している体なのか、はたまたさっさとちんこに辿り着きたいのだろうか。たぶん両方だ。
その瞬間、そういや俺って入院患者だったな、と思い出す。

ぼく
「これじゃ...今日中に退院は無理ですよね?」
長期入院患者の癖に今日退院するつもりなのか。
ナース
「もぅ!そんなの無理に決まってるでしょう?ちょっと考えが甘すぎよ?ココだってこんなに腫れてるんだし。」
この状況が甘々である。

ぼく
「で、ですよね。はぁ、これ大丈夫なのかな。こんなの初めてだよ。この腫れって治るもんなんですか?」
この時点で年下で軟弱な患者という設定はある程度固まってしまった。
ナース
「どうかな?まだなんとも言えないなー」
ナースはそう言って股間をさする。もうパンツの上から完全に握られてしまっている。ギアはドライブに入っている。

ぼく
「これって、さすったりマッサージすれば血行が良くなったりして腫れが治るんですか??」
素直におちんちんマッサージしてと言えない自分が恥ずかしい。いやこの状況も十分恥ずかしいが。

ナース
「そうねー、血行を良くするのは大事。でも1番大事なのは溜まってる毒素を出すことなの。これだけ腫れてると...直接見ないとね。脱ごっか♡」
ぼく
「は、はい!」
そういって彼女は僕のパンツを脱がすと、太ももに馬乗りになる。
完全にエロマンガである。

ナース
「うわー、もうこんなに腫れてる♡これは毒素を出さないとマズイよー。直接触るね♡」
ぼく
「あっ」
エロマンガである。

ナース
「うわっ!?すっごく熱いよ?これはすぐに治療しないとダメだよ♡」
ぼく
「はぁーっ///」
エロマンガである。

ナース
「これは...♡ちゅっ♡」
ぼく
「ひぃっ!!」
ナースの舌が患部に触れる。そのままなだれ込むように患部を口に咥え、なんとも卑猥な音が診察室に響く。即尺だ。
ナース
「んー♡どう?♡」
ぼく
「んはっ、ぁぁちょっと待ってっぅぁ!」

いや本当待ってくれ。展開が早すぎやしないか。これじゃ快楽天の巻頭カラーだ。
ていうか僕も僕だ。雰囲気で興奮してたとはいえ早すぎやしないか。もう完全にエロマンガのテンプレに乗ってしまっている自分に気付く。
でもしょうがないじゃないか!
興奮するんだもん!!
気持ち良いんだもん!!!
さすがに感じすぎているぼくを見て、

ナース
あっちょっと止めよっか。まだ出しちゃだめだもんね?やりすぎちゃった?」

今日初めて彼女の素を見た瞬間であった。
時計を見ればまだ10分も経っていない。これじゃ早漏にも程がある。ナースと目が合う。彼女は悪戯っぽくはにかむ。
このままじゃどうしようもないので、無い知恵を必死に振り絞って会話をする。
ぼく
「っあぁっ、は、はい、ちょ、ちょっとこれは悪化しちゃうかもしれないです」
早漏ではない。病気なのだ。なんてったって僕は長期入院患者なのだ。悪化して死んじゃったりなんかしたらどうするつもりなんだ。
どちらにせよこのままの状況はまずい。何とかして状況を変えなければいけない。せっかくの舞台だ、誰しもそう思うのではないか。
"まだ10分"。この選択が後にどう影響するかなど、この時の僕は知る由もない。

ぼく
「と、ところでぼくだけほぼ裸なのはちょっと恥ずかしいですよぉ...。お、おねえさんもちょっと脱いでくれたら恥ずかしくなくなるかもー、なんて」
22にもなってこんなショタみたいなセリフを吐くとは思ってなかった。ナースさんの呼び名を決めかねていたのもあり、今後彼女の事はおねえさんと呼ぶ事になる。ますますショタっぽい。
だが、我ながら状況を一変させるには良い判断だったと思う。一呼吸ついたことによって息子も落ち着いたようだった。

ナース
「えー?♡じゃぁー、これくらいで良い?」
そう言って胸のファスナーをちょっぴりおろすナース。
ぼく
「えー!それだけ!?僕なんかおちんちん出してるのに!?それじゃ全然恥ずかしさが紛れないよ!!」
快感の波が引いて冷静になったとは言え、必死すぎである。もはやクレーマーだ。さっきまで喘いでた男とは思えない。
だがしかし!この世界では!これくらい日常なのだ!
ナース
「しょうがないなー♡これでいーい?」
ナースさんからすればこんな場面日常茶飯事なんだろう。そう言ってナース服上部のファスナーを8割程おろすと同時に服から肩を抜いて脱ぐ。深い橙色のブラが露わになる。

ぼく
「うわー、おねえさんそんな派手な下着でお仕事してるの?いやらしいなー」
マイナス80点の返しである。まるで冴えない竿役の台詞だ。それにしてもやけに強気である。ちんちんさえしゃぶられてなければもう怖いものなしだ。
そのままブラ越しに胸を触る。
ぼく
「おねえさんも触ったんだし、おあいこ、だよね?」
実際にいった台詞である。文字に書き起こしている段階で引く。これは結構キツい作業だぜ。

ナース
「もー♡うん、いいよ♡」
こうなればもうイケイケ押せ押せである。胸から腰、お尻へと満遍なくナースさんの身体を堪能する。
ぼく
「おねえさん体温低いね。ぼくとは大違いだ」
ナース
「それはあなたが病気だからでしょ?でもたしかに身体は冷えやすいかも。平熱は35度台かな」
ぼく
「35度!?そりゃあ大変だよ。さすってあげるね?」
雑談も挟みつつ愛撫を続ける。今度はこちらが診察する番だ。上体を起こしてそのまま背中に手を回し、片手でブラを外す...つもりだったが、上手く外せない。実はプレイ中、これが1番恥ずかしかった。調子に乗るのも大概にするべきなのだ。

ナース
「なにー?外したいの?いいよ♡」
僕の中では穴に埋まりたい案件でも、ナースさんにとっては些細な事だった。ありがたい。結局抱きしめるように両手をまわし、左右の手でブラを外す。たわわのご開帳である。すぐさましゃぶりついた。情緒もあったもんじゃないが、ナースさんはあらあらうふふと笑うのみである。これが日常(ry

せっかくなので、もう少しシチュエーションで遊ぼうと思いつく(もう十分遊んでいる気もするけど)。

ぼく
「こんなことになっちゃって...治療とは言え先生が来たらまずいんじゃない?」
お前が言うのか。
ナース
「確かに見つかったら大変だよ?でも先生はまだ他のお仕事があるから。」
そして耳元に近付き、
「でもさ?普通に考えてよ♡ただの治療でここまでしないよ?キミだけだから♡」
そう言って抱き合う2人。ここが世界の中心だ。
そのままの流れでキスをする。

ナース
「ちょっとスイッチ入っちゃったかも♡」
これで2人のスイッチがONになった。あとはブレーカーを落とさないようにパーティーを続けるだけだ。秘所に手を伸ばして言う。
ぼく
「おねえさんって体温低いね。でもココは熱いよ?しかもちょっと湿ってる...もしかしておねえさんも病気?」
ナース
「もう!分かってて言ってるでしょ?ほら、直接触って♡」
そう言うと彼女は布越しに触っていた僕の指を、その内側へと誘う。
ぼく
「うわぁ、もうこんなに濡れてる」
あまりにもベタな台詞しか吐けない自分のボキャブラリに失望するが、僕の指はそのまま彼女の中へと進んでいく。
ナース
「もっと奥に入れて?♡ほら、ここ、そうもう少し上っ♡あっ♡」
慣れない僕をリードしてくれる。なんて献身的なんだ。
ナース
「っ♡もう我慢できなくなっちゃった♡じゃあ脱ぐね?」
そう言うと彼女はパンツを下ろし、ナース服だけを残し半裸状態になる。下着を脱がすことに強いこだわりがある客も多いのだろうか、彼女の口調には含みがあった。脱いじゃうよ?良い?自分で脱がす?履いたままが良い?よーしじゃあ脱ぐからね?と問われているようだった。
思わず感動した僕は
「おねえさんも舐めてくれたし、僕もお返ししなきゃ...ですよね?」
よく言う。もう今思い返すと最高にダサいし恥ずかしい。でもこの時の僕はドヤ顔である。
そのまま彼女は背を向けお尻を突き出してくる。69の体勢だ。弄るよりも先に舌を使って舐め回していた。もう言葉は出てこなかった。一心不乱に彼女の恥部をしゃぶる。舌を膣内に入れる。じゅるじゅると汚い音を立てて。演じてくれているのだろう、彼女は手の動きを止めて喘ぎ声と共になだれ落ちた。味や匂いなんて覚えていない。それくらい夢中だった。

ナース
「もう入れたいでしょ?♡」
再び2人で顔を合わせる。騎乗位の体勢になり、彼女は用意してあっただろうゴムを口に咥え、僕のおちんちんに装着してくれる。話には聞いたことはあったが、体験してみると実に艶やかで無駄のない動作だった。
彼女は腰を上げ、ゆっくりとおろす。
ナース
「入っちゃったね♡」


20分後


いやごめんなさい。つい数時間前の出来事なのに、自分の体験を書き起こすことがこんなにキツいとは思ってなかった。ツッコミをいれつつ書き進めないと恥ずかしすぎて精神を保てない。ましてやセックスシーンとかもう無理だよ本当。どうツッコめば良いのか分からないというかいやまぁ突っ込んでるんだけどさ。

さて、いくつかの体位を経て、ぼくは後背位で腰を振っていた。もちろん診察台の上だ。メジャーな体位の中ではこれが1番しっくり来るし気持ち良い。もしかしたらもっと気持ち良い体位があるのかもしれないが、あいにく四十八手は心得ていなかったのだ。甥っ子には勉強は大切だぞ、知識がないといざという時に後悔するぞ、と強く言い聞かせることにしようと思った。彼はまだ3歳だが。

そろそろ良い頃合いである。60分コースで残り時間は半分を切った。彼女も先ほどからペースが激しくなっている。無論ぼくもだ。診察室に響く腰を打ち付ける音と彼女の喘ぎ声が徐々に大きくなっていた。ゴールは近い、はずだった。

ここで僕は重大な事実に気付いてしまう。

ー射精感が込み上げてこないー

そう、イケないのだ。
中折れしている訳でもない。息子は平均に比べて控えめサイズとはいえビンビンである。開始10分で射精しそうになった彼とは大違いだ。割礼の儀式を受けた部族のように、今の彼は頼り甲斐がある。彼は俺に任せろ、と言わんばかりに僕を引っ張ってくれている。
彼にとってはまだフルマラソンを折り返したぐらいの感覚なのだろう。だが、僕の体力ではハーフマラソンが限界なのだ。体力があってもフルマラソンに挑戦してしまっては時間切れが見えている。

不感という訳でもなく、しっかりとナースの膣圧を感じている。ラストに向けて彼女の締め付けがキツくなった、気がした。僕もそれに応じようと、必死に腰を振る。
ブレーカーは上がったままだ。

違和感に気付いた彼女と目が合う。
「体位、変えてみる?」
ぼくらは再び騎乗位へと戻った。なんとなく最初に感じた興奮を思い出して、射精感がこみ上げてくるのではないかと思っていたが、そう簡単には行かなかった。
腰が動く。気持ちいい。中折れだってしてない。でも、ぼくが達することはなかった。
ふと、射精感よりも初めて会った相手と腰を動かすタイミングを合わせるのって難しいな、なんて考えている自分に気付く。この状況に慣れ、少し冷静になっていたのかもしれない。情熱を燃やさなければ。
時計を見る。残りは20分。情熱よりも焦りが込み上がってくる。それに気付いた彼女は、ぼくの乳首を舐め回し、より一層激しく動いてくれる。
2人の動きが止まる。
彼女は
「どうしよっか?」
とはにかむ。近くの籠からヘアゴムを取り出し、肩ほどまである髪をくくった。彼女も焦っているのだ。
僕はただただ情けなかった。ついさっきまで早漏がどうだと騒いでいたのに、今度は遅漏である。息子との意思疎通がうまくいっていない。子育てを間違ったのかな、なんて考えが頭をよぎる。

ナース
「ちょっと待ってね。」
彼女は僕から離れ、診察台を後にする。診察台には全裸の僕が残った。ちんこは真っ直ぐに天を見上げている。
誰もいない宇宙空間に投げ出されたみたいだった。こわかったし、不安だった。本当はその場で笑いたかったかもしれないし、泣きたかったのかもしれない。でも僕はただ真顔で天井を見つめることしか出来なかった。

すぐにナースさんが戻ってくる。おそらく数秒、でも僕には長い長い時間だった。彼女は片手にローションを持っていた。ローションを垂らす。
「大丈夫、すっきりしちゃおうね」

もうこの時の感情を上手く表現できない。
ただ一つ言えることは、あの時間、あの場所には患者がいて、ナースがいた。
病気に抗おうと必死にもがく患者と、それを懸命に支えてくれるナース。これは治療そのものだ。
ただリアルな世界がそこにはあった。

ナースさんはゴムの上から息子をしごく。だが気持ち良いだけで状況は変わらない。苦しむ患者を見て彼女はゴムを外してそり立つそれを口に咥えた。僕が数十分前に達しそうになった状況と一緒だ。
ナースさんはすごい勢いで僕のちんこをしゃぶり尽くす。今までで1番気持ちよかった。SEXよりフェラチオの方が気持ちいいなんてよく聞くが、僕はその通りだな、と思っていた。
「出そうになったら言ってね♡」
なんて慈愛に満ちた言葉なんだろうか。僕には彼女がナイチンゲールに見えていた。ナイチンゲールが僕のちんこを一心不乱にしゃぶっている。僕は歴史の証人になった。より動きが激しくなる。
「あぁ、イキそう、かも」
「うんっ」
彼女がタイミングを合わせてくれている。それが仇となったのかは分からないが、結局僕が達することはなかった。時計を見る。残りは15分。
「ごめんなさい。凄く気持ちいいのに、でも、いけなくて」
最低だ。謝ってしまった自分が本当に情けなかった。彼女の尊厳を奪ってしまう発言を前にしても、ナースさんは
「大丈夫だよ。だってこんなにおっきぃままだもんね♡」
と言ってくれ、激しい手淫と濃厚なフェラチオを繰り返してくれる。
僕は必死だった。彼女の乳を揉みしだいたり、ニーハイとスカートの間の太ももを撫でながら、ただ快感に身を任せようとしていた。僕は目を瞑る。性感を高めなければならない。今までのオナニーのおかずが走馬灯の様に駆け巡った。少し持ち直した気もしたが、それ以上の進展はない。

ふと、頭の中でテレクラキャノンボール2013で耳を塞ぎ、必死に腰を振って射精せんともがいていた梁井さんの映像が浮かんだ。
DVDを借り、自宅で友人と爆笑しながら見ていたことを思い出し、自分を恥じた。梁井さんは必死に戦っていたのだ。
まさか僕がこっち側になるとは思いもしなかった。環境も条件も全く違う。むしろ僕の方がはるかに恵まれているというのに自身の射精をコントロール出来ない。ただつらかった。
電話が鳴る。残り時間が10分になった合図だ。これ以上ない焦燥感に駆られた僕を、ナースさんが励ましてくれた。なんと言われたかは覚えていない。それくらい必死だった。

電話が鳴った直後だったと思う。ついにその時が来る。
「あぁっ出そう、あ、いく、出るよっ!」
「うん♡」
今度はナースさんも手を止めなかった。そのまま口に咥え、ゴールに備える。

 

その日1回目の吐精だった。

 

どれくらい出たのかは分からない。けど、込み上げる射精感はいつもよりも長かった気がした。ナースさんはわずかに声を漏らしながら、しっかりと僕を包み込んでくれていた。
シャカシャカでフィニッシュ。テレクラキャノンボールだったら減点である。

僕の吐精を最後まで受け止めた事を確認した彼女は、うがいをしに診察台を離れた。
診察台に1人横たわる僕は、情けなさや申し訳なさを感じつつも、安心感と、献身的に僕を支えてくれたナースの優しさにただただ感謝していた。
さっきは宇宙空間に投げ出されたような心持ちだったが、今は違う。ここは現実で、彼女はナース、僕は患者だった。ナースさんの治療のおかげで、僕は救われたのだ。圧倒的な現実、リアルな世界がそこにはあった。
役割を終えた診察室の陰からは、お湯を溜める音だけが響いていた。

 

その後の事は事細かく書く必要もないだろう。
よかったぁー、と言いながらナース服を脱いだ彼女が戻って来る。彼女も安心したのだろう。ホッとした表情だった。
「身体洗おっか。ちょっと急ぎ足になっちゃうけど許してね♡」
プレイが終わればそそくさと雑な対応をとられることも多いとはよく聞いていたが、一連の行為が終わってもなお彼女は優しかった。ここにきてようやく僕はソープに来たんだ、という実感が持てた気がした。

2人で雑談をしながら身体を洗ってもらい、お風呂に入る。今日のこと、他のお客さんの変わったシチュエーションのこと、ここらへんで美味しいご飯のお店のこと。そんな話をした。実はこういうの初めてなんです、と告白した僕に驚く彼女。えー、こういう場所は普通のお店に飽きた人が来るんだけどなー。最初にここじゃあ普通のお店が楽しくなくなっちゃうよ、と笑いながら言う。僕もその通りだなと思った。思わず笑みがこぼれる。初めてのお店がここで本当に良かった、心からそう思えた。

身体を拭いて服を着ると、
「じゃあいそごっか。これ以上遅くなると怒られちゃうよ」と彼女が笑って僕の手を引いて扉を開ける。時計を見ると終了時刻を5分過ぎている。延長取られちゃうかな、なんて笑いながら呟く僕に大丈夫だよ、とはにかむ彼女と腕を組んで階段を降りて行く。受付に通じる最後の階段の隅で2人は抱き合う。僕は感謝の言葉を伝え、笑顔で彼女と離れた。最後の階段を降り受付に辿りつく。
「ご満足いただけましたか?」
男が囁く。ノヴだ。すっかり忘れていた。まだいたのかお前。でも彼のおかげでいつもの生活に戻ってきた感覚を得た。
満面の笑みで話しかけてきたノヴに礼を告げる。職場でもこれくらい愛想良くしてくれれば良いのに。

店を出ると、雑多な路地に明るい空が広がっていた。キャッチの呼びかけをかわしながら「今さっきやってきたばかりなんだけどな」と心の中で微笑む。

あ、そういやオプションのパンティ貰うの忘れてたな、なんて思いながら僕は歓楽街から離れた。

後日談に続く?

初ソープでイメージプレイ専門店に行った話。前編。

 


 

※えっちシーンは後編からです。

 http://notomoco.hatenablog.com/entry/2017/09/24/004023

 


これから正義の話をしよう。

 

嘘です。これは風俗童貞が初めてえっちなお店に行ったお話です。
通い慣れてる人にはありきたりな話かもしれませんが、童貞の僕にはあまりにも濃すぎる時間だったので備忘録としてその日のうちに書き残そうと思って書いたものです。

 

そしてもう一つ。これはレビューでも何でもないです。実話です。ドキュメンタリーです。

 


その日の僕は1人旅の途中で、長距離バスの車内でひたすら滞在先の風俗情報を調べていました。

きっかけは、

  • 兄が通っているという西川口にある某手コ◯クリニックの話を聞いて風俗に憧れを抱いていた
  • 前日泊まった先輩の家で性癖の話で盛り上がってしまい、行って来いと背中を押された

ためです。単純すぎる。しかし純粋に興味もあったし、国内でも有数の歓楽街の近くに行くわけだから今が絶好のチャンスだと思ったわけです。
その日は泊まる宿もなく、ラブホで宿泊してデリヘルを呼んでしまおうと思ってたものの、ラブホは予約が出来ず、料金もビジホよりは割高なのでどうしようか迷っていたところ、風俗情報サイトで気になる店を発見。
サイトには「イメージプレイ専門!あなたの好きなシチュエーションや衣装で楽しめます!」の文字。
タイミングが大事だってブラビも言ってたし、これを逃す手はないだろう。僕はその店へ行くことに決めたのでした。

 

以下が当日(途中で寝落ちしたので翌日にかけて)僕が書き残した文章です。

 

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バスターミナルに到着し、すぐさま店に電話をかける。番号を押す指が若干震えていた。おそらくこの時が1番緊張していたと思う。
口コミサイトではおばちゃんが受付をしているとのことだったが、電話に出たのはお兄さんだった。初めてなのですが予約は可能ですか?と伝えると、少々お待ちくださいと言われ噂に聞いたおばちゃんに代わる。
その後は割とスムーズだった。まず希望の子を聞かれる。20時から予定があったため、僕に残された時間は4時間ほど。この枠内で選ばないといけないため、その旨を伝える。
おばちゃんに先に好みの娘を教えてくれ、と言われたので、第1希望だった娘の名前を告げる。16:30か17:30なら問題ないとのことだったので、余裕を持って17:30から60分コースでお願いしますと伝えた。
次はシチュエーションだ。ナースさんとイチャつくことしか考えてなかったので迷わず診察室を選択。コスチュームはもちろんナース服である。
最後に予約内容の確認と、来店の1時間前に確認の電話をするように言われた。なるほど、そういうのがあるのか。僕は分かりました、よろしくお願いします、と告げて電話を切った。
あまりにもあっけない時間だった。なんだ、余裕じゃん。携帯の画面を見ると、通話時間はたったの3分1秒。

妙な高揚感に包まれた僕はまずiPhoneのアラームを16:25にセットした。そしてすぐさまるるぶのサイトで今日泊まる宿を探す。近くにある手頃な値段のホテルを予約し、そこへと向かう。チェックイン時間は30分後だったし、ちょっとコンビニでも寄ってから歩いていけばちょうど良い時間だ。
道中、シャワーは浴びてから行った方が良いかな?ゴムは用意しなくて良いよね、ホテルに着いたら歯を磨かなきゃな、とか、そんなことを考えていた。

 

ホテルに着き、予約内容を告げる。直前の予約だったせいもあり、フロントの姉ちゃんは少しもたついていた。可愛い。ちょっと申し訳ないなと思っていると、お部屋が空いていたので広めの部屋にさせて頂きました、と言われる。これはラッキーだ。運も味方につけてるぞなんて浮かれる。頭の中で姉ちゃんに今からナースさんとセックスしてきます♪とウインクしてその場を離れる。
ルームキーをもらいエレベーターに乗る。部屋に入るとツインルームだった。はしゃいで写真まで撮った。こんなことならデリヘルでも良かったじゃないか!と笑ってしまう。
荷物を置き、迷った挙句軽くシャワーを浴びることにした。シャワーから出て歯を磨きおえたところで携帯のタイマーが鳴る。電話の時間だ。
リダイヤルするとさっきのおばちゃんが出る。確認の電話であることを告げるとお待ちしておりますと言われ切られる。30秒ほどだった。

ギリギリに行って遅刻するのもこわいので、早めに出ることにした。Googleマップによれば、ホテルから店までは徒歩17分だ。30分前には現場周辺に到着できるだろう。
ちょっと緊張もあって、途中のコンビニでスミノフICEを買う。これくらいなら匂いも残らなさそうだったし、何より素面で挑むことに不安があった。

 

途中でスミノフを飲み終え、ずんずんと街をあるいていく。17時過ぎには歓楽街に到着した。店の場所を確認してから近くの広場で時間を潰すことに。気分はまるでデート前の女子高生である。
しかし。今からセックスをするというのに、ぼくのおちんちんはホテルを出てから冷静な状態を保っている。このままで本当に大丈夫なのかと焦るぼく。対照的に息子はぐっすりだ。心に身体が付いてこないとはこのことなのだろう。もはや引退直前のアスリートである。

 

おろおろとしているうちに予約時間の15分前になった。こうなればもう覚悟を決める他ない。初ソープで勃起出来なかったなんて良いネタになるじゃないか!そう自分に言い聞かせ、店へと歩みを進める。開戦だ。

 

 

道中のキャッチを交わしつつ、目的の店の前へ到着。何というか他のソープとは明らかに装いが異なる建築物が、ぼくの目の前に、ある。
他店が高級ホテルとすればここは老舗旅館といった風貌だろうか。何も知らない人が見れば駄菓子屋だと言うかもしれない。緊張とは違う胸の鼓動を感じている自分に気付く。店の前では2人のおばちゃんと1人の若い男性が談笑している。ふと、友人と冷やかしで行った飛田の風景を思い出す。そうか、ここはソープ。
看板の店名も間違いない、ここだ。

 

店に入り予約している事を伝える。すると受付のにーちゃんは笑顔で対応してくれる...のだがなんだろうこの違和感。にーちゃんの顔を見た僕はハッとした。

 

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こ、この人、人事部のノヴ※だ!なんでここに!?え、本人!?双子!?


※人事部の偉いさん。HUNTER×HUNTERに登場するノヴに激似だったので勝手に命名。勿論精神が折れる前である。

 

緊張は若干解けた。が、突然のノヴの登場にぼくの頭は混乱中である。そんなぼくを優しく待合室に誘ってくれるノヴ。なんて紳士なんだ。ぼくがオナニーしてる最中に内定の電話をかけてきた件は水に流してやろうと思った。おちんちん出しながら採用決定の電話を受けたぼくの切なさは今晴れたのだ。

待ち合い室に通される。すぐにお茶とおしぼりを渡され、時間までしばらく待つように言われる。
4畳あるかないかの空間に、2人がけの赤いソファーが2つと小さな本棚、そしてぼくが1人。端に置かれたテレビではローカルニュースが流れている。女子野球日本代表に密着した特集だった。ぼんやりと画面を見つめながら、偶然にもマニアックな店でマニアックなニュースを見ているこの状況にちょっと和む。

 

辺りを見渡すと、壁一面に使用可能なコスチュームの一覧が張り出されている。
イメージプレイを専門としているだけに、その幅は広い。安っぽいアイドル風衣装から本格的なメイド服にチャイナ服、市内に実在する高校の制服まである。夏服冬服完備だ。これで痴漢プレイなんてした日にはもう前日の自分に戻る事は不可能だろう。
野球のユニフォームはなかった。

 

反対側の壁を見ると、プレイ現場の簡単な説明が説明されていて、プレイ難度が星3段階で表記してある。教室にオフィス、自宅や電車内など8種類くらいだ。右下にある診察室の欄を読むと、どうやら女医&患者の設定がスタンダードで、えっちな診察がメインらしい。
難易度は星1.5。初級〜中級といったところか。オフィスや教室は星2以上だ。自由度が高い分クリエイティブ性が要求されるのだろう。
にしてもプレイの幅がありすぎである。各組み合わせを試すなら5年くらい通い続けてもコンプリート出来ないんじゃないか。あらためて自分がいる空間の異質さを実感する。


しばらく待合室で待っていると再びノヴが登場。初めての来店であること確認すると、カルテのような紙を渡される。プレイを開始する前にアンケート用紙に記入し、女の子にあらかじめ設定を伝えるのだという。

 

ノヴ 「本日は診察室希望とのことですので、お客様と女の子の設定、例えば患者とナースなどをお書きください。そして責めたい場合はこちらの赤枠、責められたい場合は青枠に丸をつけて頂き、枠内にプレイ内容の選択欄がございますのでご記入下さい。」

 

渡されたアンケートを見てびっくり。ざっくりではなくかなり細かくプレイ内容の選択が出来るようになっているのだ。責め方の痴女度具合まで完備されている。なーにが「えっちな治療にあなたはされるがまま!初めての方におすすめです!」だ。ぼくはすぐその欄に丸をつけた。


設定は勿論ぼくが患者で女の子がナースである。長期入院か短期入院なのかまで選べるぞ。ここは長期入院患者ということにしておこう。


次はプレイ内容。いくつか羅列されており、希望する場合は丸を、しない場合は×をするシステムらしい。迷ったものの、乳首舐めと垂涎に丸をつける。アナル責めを選ぶメンタルはなかった。

最後にオプションを選択。ローターやソックス持ち帰り、聖水など10種類弱あっただろうか。
右上の「ペンライト(夜這い用)無料」の欄に目がいく。なるほど、自宅で嫁や娘が寝てるところを襲うってシチュなのだろうと合点が行く。なんだここは。こういう後出しジャンケンはやめてほしい。同時に自分がいかに平々凡々なシチュを選択してしまったのか、という若干の後悔がよぎる。通えないのが残念でならない(まだ何も始まってないのに)。
ぼくは使用済パンティ持ち帰りの欄に丸をつけアンケート記入を終え、ノヴを待った。

 

 

ノヴはまだ来ない。時計を見るとまだ予定時刻まで10分もある。1分が長い。
ふと本棚の端あった黒いアルバムが目に入る。任侠ものの漫画は読む気にならなかったので、これを手に取る。日記?なんだろう。客の交流ノートかな。興味津々でそれを開く。

 

♡今日のプレイ♡
シチュ:電車
〜女子高生と痴漢プレイ〜

 

なるほど、プレイのサンプル集である。おそらく店のマニュアル的なものなのだろう。ページをめくると10ページにも満たない台本形式の会話が印刷されている。ほー、これは初心者にもありがたい。自宅シチュのページを見ると、

 

妻「おかえりなさい、あなた♡」
夫「ただいま。今日も疲れたよー」
妻「あらあら。今日はお風呂にする?ご飯にする?それとも、ワ・タ・シ?♡」
夫「じゃあお風呂にしようかな」
妻「つれないわねー。お湯は熱い方が良かった?」
夫「うん、そうしてくれるかな。じゃあ着替えてくるよ。」
妻「はいはい、じゃあお風呂入れてくるわね〜♡」
※記憶の限り原文ママである

 

ある種の衝撃を受ける。これじゃまるで日常だ。なんてこった。「じゃあお前を食べようかな!」なんて言ってそのまま玄関ファックに走るんじゃないのか。自分の安直さに笑ってしまう。そうか、ここは非日常であって日常なのか。まるでラーメンズのコントだ。じっくり雰囲気から作っていくんだ。セックスするだけなら適当なソープで良いもんな。未知の世界を見すぎてもうここ30分でぼくの情緒はズタズタである。

そんなことを思っていると「アンケートはお済みですか?」とノヴが登場。不備がないことを確認し、アンケートを回収する。

 

ノヴ
「では60分コース、診察室でお客様が患者、女の子がナース。責められる方をご希望で、希望プレイは乳首と涎でお間違いないですか?」

 

お間違いないが今後ぼくは上司の顔を見るたびにこのシーンを思い出す事になるのだろう。

「では割引込みで21000円になります」
お会計を終えると、ノヴはもう少しお待ちくださいねーと言って去っていく。
テレビに目をやると、女子野球のニュースがまだ続いていた。時計は予約時間を2分ほど回っている。そしてすぐノヴが現れぼくに告げる。

 

「お待たせいたしました。では先に手の消毒をさせて頂きますね。」


そう言われた僕は手を差し出し、霧吹きで消毒液をかけられる。

 

「それではお部屋にご案内いたします。」

 

ぼくはノヴに続いて待合室を出た。

 

 

後編に続く。

http://notomoco.hatenablog.com/entry/2017/09/24/004023